第1回担当者会議

7.経営診断しながら経営管理に取り組もう

[ 用語の意味・背景 ]
農業経営の改善を考えて行く上で、経営診断し管理していく重要性が話題になります。しかし「よく分からない」、「数字は苦手だ」、「コンサルタントの専門家がやればよい」、「会計事務所にまかせればよい」等の声をよく聞きます。経営改善計画書の目標実現をめざす認定農業者なら、経営診断しながら経営管理に取り組んでいくことは大切なことです。

[ 概 要 ]
1.経営の管理と診断
 経営管理というと、一般的には企業経営で多く使われ、家族経営を中心とした農業経営については馴染みにくい言葉かもしれません。一般企業での経営管理とは、雇用者をいかに管理してコントロールするかの課題から出発しています。最近では、人事管理、労務管理、生産管理、財務管理、資金管理、販売管理、購買管理等と、その活動分野は細分化され広がっています。そこでは、管理するものと、その指示を受けて働くものとが明確に分かれています。

 これに比べ農業経営を見ると、企業的な経営は極めて少なく、大部分は家族経営であります。
そこでは、ほんの一部を除き雇用者対策としての管理の問題は少なく、大部分が自己管理の問題です。農業経営の管理者である経営主は経営者、土地所有者、労働者の三つの役割を一人で担っており、企業経営とは根本的に違っています。

 しかし、経営者と労働者が未分離の農業経営でも、最近の認定農業者の経営を見ると、投下資本や債務が多かったり、販売、購買の取引も大きくなっています。その上、雇用やパート労働力の導入で、企業のような人事管理や労務管理はないものの、単純な日常の生産管理の他に、多くの経営管理業務が存在してきています。そこでは、農業経営といっても、一般企業と違った意味で経営改善につながる経営管理のための経営診断が求められています。

2.経営診断の流れとポイント
経営行動には、計画(plan)があり、計画に基づく実行(d o)があり、その後の反省(see)のプロセスがあることはよく知られている通りです。この繰り返しが経営行動であり、反省の作業が経営診断です。この経営改善の一連の流れ(plan→ d o → se e)を「経営のマネージメントサイクル」と言われています。この流れは一回で終わるものではなく、(→計画→実行→反省→)と言うように絶えず循環し拡大再生産につなげる方向が重要です。

 経営診断は第三者(外部)による診断もありますが、最近では農業者自身が経営改善の目標に向かい自らの経営を科学的に把握し、その結果をもとに自己診断し、改善目標に向けて計画を立てていく自己診断が重要になっています。そこでの重要なポイントは次の通りです。

 ①明確な経営計画をもつこと
経営診断を行うに当たって考えておきたいことは、自らの経営目標をはっきりさせておくことが重要です。経営診断は、当面の短期目標とともに長期目標に照らして勧めなければなりません。そして、この計画なり目標値は具体的かつ明確なものでなくてはなりません。目標は単なる夢ではなく、将来の経営(作目)規模、所得等を具体的数値として刻んでおく必要があり、必要に応じて書面にしておくことが大切です。
 ②改善に結びつく診断であること
経営診断の目的は、経営活動の成果を点検し、次への適切な改善策がとれるようにすることです。このため診断は単なる実績を調査し問題点を摘出しただけでは十分でなく、経営改善に結びつく対策につなげなければなりません。
 ③経営診断は年一回ではない
技術革新が次々に押し寄せてきている今日、年一回のだけの診断ではこの波に対応して生き延びていけないほど変化が激しいものです。一年間の経営成果についてまとまった経営診断も必要ですが、これと併行して各部門について、また経営業務やそれぞれの時期の区切りにおいてフイードバックシステムの流れの中に、経営診断を位置づけ実践していくことが大切です。