2.農家個と地域(集落)を考える
[ 概 要 ]
1.はじめに
農業経営者は単なる経営者個人のせまい問題だけで終わるのではなくて、農業経営者もまた社会(地域)の中に生きている個人であるという考えがあります。いわゆる二重構造という考えです。今の農業者は個というものをどう考えているのか、社会(地域)というものをどう考えているのか、その対立をどう考えているのか、経営改善を考える上で整理しておくことが大切です。
2.地域(集落)意識
農業者個人の経営発展の方向が集落なり地域がどの程度かかわってくるのか、ということについては次の両極端な意識があるよう思えます。
①我が家の技術とか経営とか、我が家と関係する経済的問題に関する関心しかない農業者。
②非常に成功した高い水準に到達した農業者は、内面的に地域といものを見直しています。(この農業者は、伝統的に土地と水の効率的利用、共同利用を通した経営発展を考えている)
3.農法と集落基盤
①日本の農地は歴史的な所産として、零細で分散錯圃が基本にありました。危険分散と平等の原があったのです。農法からは一圃式であり、一圃式農業というのは作物はその中で経営体系として完結できました。しかし、なぜ集落を意識するのかは、分散耕地制度では隣に迷惑をかけてはならないという気分が強く存在したり、水の共同利用が基本的にありました。
②このような背景の中で、個々の農家の自立の過程で、土地改良区とか、農事実行組合や農協とか、その他、機械や施設の共同利用組織という、地域の社会化された組織が機能分化しながら個が成立したという経緯がありました。
③これを個の立場から見ると、個別的な経営に係わる固有なコストと、社会的に外部化されたそれぞれの機能に係わるコストの両方があって、それぞれのコストを低減するような方向で、個別経営が経営改善に取り組みながら発展してきたと思えます。
④土地については市場原理(メカニズム)が最も作用しにくい領域であります。この下で、最近の土地利用集積や大型機械化を推進するためには、個別的なコスト削減で乗り切るのか、社会的(地域的)コスト削減で乗り切るか、どうマネジメントするかが重要になっています。
4.集落(地域)の機能とタイプ
①上記を展開するためには、それぞれの集落(地域)がどういう意味を持つかは立地条件によりずいぶん違ってきます。スケールメリットを追求するような営農対策と生活維持を強く持つ対策の場合では地域農業の展開方法が違ってきて、マネージメント手法も違ってきます。
②土地集積や営農推進上で、目には見えないことですが、ちょっとした応援があることが、農業を中心にやっていく人にとって非常に大事な点です。(支援する場合の視点)
5.集落から地域へ
①最近では集落エリアからも少し広い地域エリアへ、農家も非農家も集まったような地域組織が、地域の問題にいかに取り組むかということが必要な時期になってきています。
②個と地域(集落)を統合する主体は、一つは地域的責任を強く感じる農業者、もう一つは市町の農政のリーダー、農協の営農リーダーであります。(二重性をきちんと捉えられる人)
(金澤夏樹氏の視点を参考に作成)