第1回担当者会議

1.家族経営と企業経営

[ 用語の意味・背景 ]
将来に向けての農業の基本方向は「産業として自立し得る農業の確立」である。そのような農業を確立するには、個々の農業が他産業の経営と遜色のない内容を備え、農業経営者は他産業の経営者に匹敵する能力を持った企業者でなければなりません。そのためには「家族経営」と「企業経営」の違いをよく理解しておくことが重要です。
この概念と関連する政策的用語として、①認定農業者、②地域水田農業ビジョンの担い手、③水田経営所得安定対策上での担い手、という表現もあり、これらとの関連の理解も大切です。

[ 概 要 ]
1.家族経営
 家族経営とは、いうまでもなく、家族を単位として営まれる経営で、通常、世帯主が経営者として管理・運営を行い、農業労働の大部分を家族員によって賄う経営形態です。現在、自由主義経済諸国の農業では家族経営が最も一般的な形です。しかし、それらの性格は国によって違いがあります。また経済の発展段階によっても内容が異なります。

 経済が未発展段階から発展するに従がい、学術的用語になりますが、「自給的家族経営」、「小商品生産的家族経営」、「商業的家族経営」へと変化してきました。これらの発展段階に対応して、家族形態も家父長的大経営から直系型・近代的小家族へと変化し、労働手段も手労働から次第に機械・施設等、より高度の資本装備が用いられるようになってきました。

 最近では、融資等を積極的に活用して農用地の拡大、機械・施設の高度化を図り、より多くの雇用労働力に依存する「企業的家族経営」が次第に増加しています。これらの経営では、雇用労働との関係から家族労働も正当に評価するようになり、経営の内実は企業経営とあまり違わないものになってきているといえます。

2.企業経営
企業経営とは、株式会社のように法人格を持ち企業の原理に基づいて経営の管理が行われ、財務管理の体系もきちんと整備されている経営です。
家族経営では、経営主の管理にある土地・労働力・資本を投下していく経営を行い、その成果として自己所有農地・家族労働力及び自己資本に対する収益としての「農業所得」を得ることを目標としています。

 これに対して、企業経営では「利潤」の獲得が経営目標とされています。法人である企業とその経営者は別の人格として扱われています。
企業は資本と負債の形で資金を調達し、経営者はそれらを運用して経営を行いますが、調達資金は全て企業として借り受けた形を採ります。従って、家族経営の場合に農業所得に含まれる所有地地代・家族労賃・自己資本利子の相当分は全て費用となり、粗収益から一切の費用を差し引いた残りが利潤ということになります。

3.関連行政用語
上記の表現に関連して、最近、行政用語として下記の3つの表現が使われいます。意味を良く理解して混乱のないようにしたいものです。
①認定農業者(平成5年度から)
農業経営基盤の強化の促進に関する基本方針の中で規定された「効率的かつ安定的な農業経営」をめざして、年間総労働時間、年間農業所得等の柱を目標とした農業経営改善計画を作成して各市町村で認定された計画書を持つ担い手をさしています。
②地域水田農業ビジョン上での担い手(平成16年から)
各市町村水田農業推進協議会で定めている「地域水田農業ビジョン」で規定された担い手をさしています。
③水田経営所得安定対策上での担い手(平成19年度から)
平成19年度から打ち出された国の水田所得安定対策上での担い手の規定である。原則として、北海道を除き、個別の経営規模が4ヘクタール以上の認定農業者、20ヘクタール以上の集落営農等(特認を含む)での対策加入者をさしています。