3.経営費と生産費
[ 用語の意味・背景 ]
農業所得と利潤の話の中で、生産費が生産物価格を上回るようでは利潤の獲得はおろか、農業所得も世間並み以下の水準になってしまうと説明しました。
合理的な農産物価格形成のために、生産費の低減が重要な課題になっています。ここでは、生産費用項目を経営費と対応させながら理解してもらうための資料です。
[ 概 要 ]
「経営費」は「農業所得と利潤」で説明したように、物財費に雇用労賃・小作地地代・借入資本利子を加えたもので、経営が生産のために用いた費用の合計です。これに対して、「生産費」はある特定の生産物の単位当たり(例えば米60kg当たり、牛乳100kg当たり等)に要した費用です。つまり、経営費は経営全体としてとらえた費用合計であるのに対して、生産費は生産物ごとに費用を仕分けした上で、その単位量の費用を求めたものである点が基本的に異なります。
下記図に、経営費と生産費の費用項目の関係を示しました。「農業所得と利潤」の説明時に記載した図は、経営全体の収支関係を示しましたが、下記図は、米とか牛乳のように単一の主産物を生産する稲作または酪農等の個々の部門ごとに仕分けられたものとして見て下さい。
生産費は細かくは①生産費(旧名称:第1次生産費)と②全生産費(旧名称:第2次生産費)に分けられ使用されています。その内容は次の通りです。
1.生産費
物財費(構成項目は「農業所得と利潤」の説明図を参照)に労働費を加えた「費用合計」から「副産物価格」を差し引いた上で、単位当たりの金額を合計して求めます。
家族経営の場合は、主として自家労働力・土地・資本を用いて生産を行い、それらに対する収益として所得を挙げることが目標なので、家族労働力は費用にみません。しかし、生産費の場合は、生産に要したものは全て費用に計上しますので、家族労働力も費用項目に含まれます。
2.全参入生産費
費用合計(物財費+労働費)に資本利子と地代を加えた「生産費総額」から副産物価格を引いて、単位当たりの金額を求めます。
前述の家族労働費と同様の理由で、経営費には含まれなかった自己資本利子・自作地地代は、生産費の費用項目には含まれることになります。